NEWS | 2023/02/06 | 

【No.55】ガーナより

Education is most powerful weapon which you can use the world

~パンドラの箱にかかった錆びついた鍵を開け続けた結果、そしてこれからも~

 

ガーナの学校の新年度が始まりました。これまで何回か書きましたが、私の活動している学 校は村の私立です。私立と聞くとお金持ちの子どもが通う学校というイメージがあります が、公立の学校では子どもが溢れかえり通えない子どもが多くいるために有識者によって 建てられた幼稚園児から中学生が通う学び舎となっています。先生は正式な教員資格を持 っている人はほとんどいなく、親族や村内で少し学のある人、在籍時に成績が少しだけ良か った元生徒が教鞭を取っている学校です。先生のお給料も薄給で、お給料の良いところがあ れば辞めていく人たちをこれまで多く見てきました。これは私がいるところだけに限った 問題ではありません。そんな村の学校の先生に、そろばん教室に通っていた生徒が中学部の 先生として採用されたのです。19歳の彼は教員養成校を卒業していませんが、ガーナの高 校卒業認定試験(通称 WASSCE)に優秀な成績を残しました。この成績証明書を校長が誇 らしげに見せてくれました。そろばん教室を日曜日に開室していた当初、彼は私が村にいつ 到着するかもわからないバス停で待っていたこともありました。また彼は日曜日の礼拝に 行かず教室に通う事を選び、教会に行かなかった事が大問題となり、必ず教会に行ってから 教室に通う事を約束させたこともありました。何よりも、そろばん教室に来た子どもには必 要とされていない九九の暗記も徹底して覚えさせました。書いた数字も分かりにくく(5) と(8)の区別がどうしてもわからずその都度何度も何度も注意をして書き直しさせました。 こうした時にいつも私の心の中の葛藤であったのが(こんな事を教えても将来、村の中だけ の生活にとどまるのだったら、彼に字の汚さを指導しても無意味なのでは?)でした。そろ ばん教室の日ではなく授業のある日、中学クラスを教えていた先生が私に「ヤブゥ(現地語 の外人、肌の白い人)」と呼んだ時、彼は「トシコをヤブゥと呼ぶな!!」と立ち向かった のです。ガーナの教育現場は、先生の言ったことが絶対です。言い訳したり反抗するような ことが有れば、直ぐに木の棒で叩かれます。「ヤブゥ」と言った先生は自分の言動を恥ずか しく思ったのか笑いながら教室を出ていきました。これから数年の時を経て彼は今、中学部 で教鞭をとるようになったのです。とてもうれしい事ですが、もし彼がこの先新たに自分の やりたいものが出てきて違う道を選ぶのであれば、それはまたうれしいです。今回、彼が先 生として採用されたのをきっかけに、かつてそろばん教室に通っていた生徒の話しを校長 としました。他に現在の確認が取れた生徒が 2 人います。2 人ともクマシにある大学に通 っているそうです。村から大学進学者は家庭の経済状況もありますがたいへん珍しい事で す。校長は「トシコが彼らに学ぶことを教えたんだよ。」そう最後に言いました。校長のそ の言葉にうれし涙がポロポロとこぼれ落ちました。今回のタイトルは、2019 年 2 月 16 日発行ガーナ挨拶 No23 から抜粋しました。ネルソンマンデラさんの言葉とともに、これ からもパンドラの箱に沢山詰まった子どもの可能性や将来の選択肢を教育という手段を使 って錆びついた鍵を開け続けていこうと思わずにはいられない(あれから)でした。

                           2023/1/30 ガーナ挨拶No55
                              スプートニクガーナ

国分敏子

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