NEWS | 2021/04/29 | 

【No.35】ガーナより

「困った子は指導者、保育者の心が生み出している」

「困った子は指導者、保育者の心が生み出している」
子どもとかかわっていると実にいろんな子どもがいて一緒にいておもしろいです。正直、 腹の立つこともあります。おもしろくて腹がたっても、やっぱり子どもと接することは楽し いものです。そんな楽しい中にも接することで悩みも生まれてきます。5 年生の男の子 A 君は、工作の材料を配ると毎回「僕のがない。」と言い、その無いと言ってきた材料は必ず 後から出てきて、完成した作品が納得いかないとジャスチャーで「これは(他の子どもと) 違う!」と言ってきて、私の中では扱いにくい困ったちゃんでした。紙コップでうで時計を 作った工作の日の出来事です。準備に時間がかかるため、休み時間から教室に入って作業を していると、その A 君は私から片時も離れません。休み時間なので、ちょこっと教室から 出たかと思えばすぐに戻り、また私のそばにやってきます。やがて休み時間の終わりを告げ るベル係の中学生が「ブレイクオーバープリーズ」と言いハンドベルを鳴らしながら校内を 歩きました。するとその言葉を A 君は待っていたかのように「トシコ、ぼく、ベルが鳴っ たから教室に来たよ。」ととても嬉しそうに言うのです。この言葉に心の奥底からこみ上げ てきたものがあって目がかすみました。正確に言えば、ベル係の「ブレイクオーバープリー ズ。」の時すでに教室にいました。準備をしている私の手元や壁に貼られた紙の時計を見て 授業を誰よりも楽しみにしていたのです。私はずっとこの A 君を「困った子」として見て いました。困った子と言うのは、私の心が生み出した扱いにくい子どもだったのです。私は 勉強が出来て大人のいう事を素直に聞く子どもも、もちろん気にかけるけれど、それ以上に 「手のかかる子、泣き虫な子、やんちゃな子」が前職より何倍も気にかかっていたはずのな のに、いつの日からか「ぼくの材料がない」とか「ぼくの作品は違う」と言ってくるだけで 面倒な子イコール困った子になっていました。休み時間のほとんど片時も私から離れずい たのに「ぼく、ベルが鳴ったから教室に来たよ。」ただこれだけの言葉でした。この日の授 業は、最後まで「ぼくの材料が無い」「(他の子とくらべて)ぼくの作品は違う」と言うこと なくやり遂げました。完成したうで時計をうれしそうに腕につけて私に微笑みました。その A 君の微笑んだ写真は涙でブレてしまっていました。『困った子はどこにもいない。』改め て肝に銘じる出来事でした。

                           2021/04/26 ガーナ挨拶No35
                              スプートニクガーナ

国分敏子

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