NEWS | 2023/06/04 |
【カーナより】No.59
子どもの健やかな成長を願う『こいのぼり』に思うこと、願うこと
~笑顔の花が咲かない心に何を与えようか~
日本の季節の行事の一つでもある「子どもの日」のこいのぼり作りは、去年を除きほぼ毎 年何らかの手法で行なっています。今年は中学3年生から6年生までがフェルトでこいの ぼりを作り、2年生と1年生では新聞紙で作った帽子にこいのぼりのデコレーションを施 したこいのぼり帽子を作りました。どの子も作っている時の顔も完成したものを手にした 時の顔も最高に良い笑顔を見せてくれました。そうした中、ある学年でたった一人、笑顔を 見せない生徒がいました。左頬には打ち叩かれて出来たと思われるあざがありました。その 生徒は明らかに私を見る目が他の生徒とは違い、大人に対して怯えているというよりも憎 しみを持っている目に思えました。傍らには幼稚園児クラスの弟が生徒の制服をつかんだ まま、怯えた目で私を見ていました。道具を使うのに同じグループになった生徒がその生徒 に「これはこうするのよ。」と話しかけますが声に出して返事をするわけでもなく頷くわけ でもなく居ました。私が学校で活動し始めた頃、家庭内で虐待されている生徒を先生総出で 救出しに行き、生徒を学校に連れてきたことがありました。アフリカ布一枚で包まれた細く て小さい身体と顔には鞭で叩かれた無数の傷があり血も流していました。この日、直ぐにこ の生徒の親族は警察に捕まりました。アフリカは子だくさん、子どもは労力という事を耳に します。がしかし、子だくさん故貧困故に子どもに対しての虐待もあるのだとこの時、胸が 締め付けられました。この10年以上も前の出来事は、親が亡くなり貧しい親族が子どもを 引き取り、食べるもの等や学費に悩み貧しさからの虐待だったのです。その時の記憶が、生 徒のあざを見て蘇ってきました。笑いの絶えないこいのぼり作りにその生徒一人だけが、笑 わず口も開かず作業をする姿に、虐待というのは推測でしかないけれど暴力を受けた者の 心の傷は深いという事に思い知らされました。如何なる理由であれ、絶対に虐待は許される ものではありません。日本で連日のように子どもに対しての虐待が報道されている中で、ど うして近いくにいる大人は救ってあげられないのだろう、どうして護ってあげられないの だろうと思う中、ここガーナにも貧しさから起きる虐待に、手助けを出来ないでいることに 無力感を感じてしまいます。無力を嘆く前に、こうして暴力により心を閉ざしてしまった子 どもに対して私に出来る事を探すのも与えられた課題としていきます。子どもには健やか に成長をしてもらいたいという願いと併せて取り組む課題なのだと思います。
2023/5/31 ガーナ挨拶No59 スプートニクガーナ
国分敏子