NEWS | 2023/08/02 | 

【ガーナより】No.61

巣立ちという華やかな過程に想う寂しい気持ち


~やっぱり子どもから学ぶ事は多い村の活動~

 

7月のある日、中学三年生で最後の授業をしました。9月に中学卒業認定試験を控え ている三年生にとって、その試験対策のための授業が30分でも貴重な時間。実際、こ の日、校長不在の間に三年生の授業を校長から頼まれていた女性教師に「トシコの授業 より今は試験のための授業が大切。」と言われました。こうしたやり取りを見ているの はもちろん中学三年生の子どもたちなのですが、子どもたちは笑顔で「トシコ、来て来 て。」と言うのです。このような場面は以前にもありました。新学期早々、校舎から離 れたところにある穴トイレの掃除をしていた女子生徒が私を見つけ手を振りながら「ト シコ~」と言いながら駆け寄ってきたのです。しかし、その後すぐに今回とはまた違う 女性教師が追いかけてきて「トシコ、この子たちに授業をしたらダメよ。掃除が終わっ ていないんだから。」と言うのに、女子生徒は「終わった。終わった。」と笑いながら答 えるのです。先日行なった授業も、この時も私が待って授業となったわけですが、遂に 中学三年生の授業は幕を降ろしました。村の子どもは、アフリカ大家族の家庭事情で、 村から離れ親族のいる家で生活することもあるので定住して村にいる子どもは多くあ りません。定住して村にいる子どもはほんの一握りです。少ないながらも幼稚園児だっ た頃から知っている子どももいるのです。そう思うと最後だった授業の日は教室に入っ た時からもう感極まっていました。10年近くの付き合いという理由だけでなく、この クラスとはとりわけ濃い付き合いだったからなのかもしれません。一人の女子生徒が 「ねぇ、トシコ、シェキナバンバン知っている?踊るのよ。」と言うので、涙が零れる のを抑えて「シェキナバンバン」と唄いながら踊ると盛り上がる女子生徒。「ねぇ、ト シコ、図書館の本で見た日本のご飯が食べたい。」と女子生徒が言うのでガーナ人特有 の「また今度ね。」の「tomorrow」ではなく、本気で考え「来週持って来てあげる。」 と応えました。校長に相談すればこれは難なく解決できる問題。しかしその「来週」は 来ませんでした。たぶん生徒はこの約束を忘れているのでしよう。しかし、私にとって 子どもと交わした果たせなかった約束になってしまいました。手芸が大好きで、指導し た縫い方や仕上がりにならない中に独自で考えた作品に仕上げる生徒に「やり方、指導 は一つでなく、同じ作品を作らせるのは日本の教育の考え方なんだ。」と深く反省し、 子どもから学ぶ場面も幾度と無くありました。それが幼少期から知っている女子生徒な のです。本を読むのが大好きな生徒も多かったクラスでした。薄暗い倉庫を図書館代わ りにしていた時、この生徒たちの様子を見て持続化給付金を図書館建設に充てたのでし た。明るく雨漏りのしない図書館で大好きな絵本を見る男子生徒、好きな小説をノート に書き写す女子生徒、子どもたちは決して私に「こうして頂戴。」と言わないけれど、 私に常に気づく機会を与えてくれるのです。巣立ちは寂しいけれど、この子どもたちか ら学んだ事を活かし、歩み続けていこうと改めて思うのでした。。
                           2023/7/31 ガーナ挨拶No61
                              スプートニクガーナ

国分敏子

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